若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
6.永遠の物語

チュンチュンという小鳥のさえずりに、向葵はあきらめたようにベッドから下りた。

――結局、眠れなかった。

時計を見れば朝の五時。

こんな時間にメッセージが来るはずがない。
そんなことはわかっているのに、スマートホンを開く。

夕翔からは、やはり何も届いてはいなかった。

健太とカフェの前で別れてからずっと、スマートホンを握りしめていた。

マンションに行こうかとも思った。
そんなに心配なら自分から連絡を取れば済むことなのに、でも、どうしてもそれができなかった。

今日で夏休みは終わる。
最後の朝だ。

ぼんやりと過ごすには惜しい。勉強しようかと参考書を開いたがさっぱり頭に入ってこない。

ため息をついて外を見ると、向葵の気分とは裏腹に清々しい青空が広がっている。

――散歩でもしようかな。

空気が澄んでいる早い朝の公園でも歩けば、気が晴れるかもしれない。
そう思って外に出た時だった。

「おはようございます」
「おや向葵ちゃん。随分早いね。何か用事かい?」

大家さんが掃き掃除をしていた。
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