若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
エピローグ
「それでは破棄させていただきます」

羽原佳織はニッコリとうれしそうな笑みを浮かべながら、とある書類をシュレッダーの上でかざしてみせた。

「お願いします」

「では」

ガガガと音を立てながら彼女の手からシュレッダーの中に吸い込まれていくのは、夕翔と向葵の期限付き結婚に関する契約書。

お互いの未来を守るためだった契約は、ふたりで作る未来のために消えていく。

――これで私たちは、本当の夫婦なんだ。
シュレッダーを見つめながら、向葵の胸はじんわりと熱くなる。

膝の上で握っていた両手が、フワリと包まれた。
夕翔の左手だ。

向葵を振り返った彼は、やわらかい笑みを浮かべて頷く。
その微笑みが良かったねと言っているようで、向葵は夕翔の手を握り返しキュッと唇を噛む。

ここはソニオ弁護士事務所の応接室。

不要となった契約書は完全に吸い込まれ、機械音が止まったところで、佳織は向き直った。
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