若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
夕翔がしみじみとそんなことを言った。

ふたりには恋人の期間がない。
何しろテレビ電話越しにはじめましての挨拶をして、その場で婚姻届にサインしたのだから。

「まあでも恋人よりも妻のほうがいいからね、よしとしよう」

「私も、恋人より夫のほうがいい。夕翔さんが、契約結婚なんて思いつかなければ、私たち知りあうこともなかったのよね」

「どうかな? そうでもないと思うよ?」

「え? ないでしょ? 接点ないもの」

夕翔は笑いながら向葵を抱き寄せて、左右に指先を振る。

「矢神から君のお話は聞いていたし、彼はうちの会社に君を採用したいと言ってた。だから彼はきっとレストランで君に名刺を渡しただろうし、君はうちの会社に就職した」

まるでそれが当然のことのように夕翔は話を続ける。

< 286 / 314 >

この作品をシェア

pagetop