若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

――ようこそ、ありがとう。
佳織は幸せに満ちた笑みを浮かべて、お腹に手をあてた。

――彼には今夜話をしよう。
喜んでくれるといいのだけれど。

そう思いながらスマートホンを手に取った佳織は、スルスルと慣れた手付きで電話をかけた。

「もしもし、向葵ちゃん? 今夜飲み物なにがいい?」
うんうんと頷いたあと、「実はね」とあることを報告する。




遡ること三日ほど前。

「よっし」
向葵はでき上がったわっぱのお弁当を満足げに見つめた。

メインはシソの葉で挟んだ豆腐ハンバーグ。ゴボウと牛肉の甘辛煮。厚焼き玉子に野菜。ご飯にはほぐした鮭がかけてある。

『なんでもいい。コンビニのおにぎりでもいいよ』
今朝、朝食をとりながら夕翔がそう言った。

秘書の矢神が今日は出張でいないという話になって、『そういう時、お昼はどうするの?』と聞いたときのことである。
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