若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
弁護士羽原佳織は、向葵の予想通りとても綺麗な大人の女性だった。

先程案内してくれた女性があとから入ってきて、テーブルの隅にグラスをふたつ置く。
コーヒーの入っているそのガラスは二重構造になっているのだろうか、グラスの表面には水滴もなく、中のコーヒーが浮いているように見えた。

女性が会議室から出て行くと、羽原弁護士は「どうぞお掛けになって」と言いながら自分も椅子に座る。

女性らしい、柔らかい声だった。

恐縮しながら腰を下ろした向葵は、背中を伸ばして椅子に浅く腰かけると、羽原佳織をまじまじと見た。

彼女はテーブルの上にファイルを広げて、手持ちの資料を確認している。

カサリと音を立てて紙を捲る指は、繊細なネイルが施されている。右手の薬指には青い宝石がついた華奢な指輪をしていて、白くて綺麗な手だ。

後ろですっきりとまとめられている長い髪は、毛先がくるりとカールしてとても艶めいている。派手ではないが、隙がない化粧。小粒ながら、首元や耳でキラリと輝くアクセサリー。
その全てが、とても感じいい。

これぞ憧れる大人の女性のそれだと、向葵はしみじみと感心する。
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