若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
――美人で、弁護士で、すごいなぁ。

自分を振り返れば、二十歳になったとはいえ。半人前のお子さまだ。

手櫛でさっと撫でただけのくせ毛の髪に、色つきのリップクリームを塗っただけの唇。身に着けているアクセサリーは千円で買ったネックレスだけ。

自分もいつか、彼女のような素敵なキャリアウーマンになれるのだろうか?

そんなことを考えていると、テーブルでトントンと資料の端を揃えた羽原弁護士が、「では、早速」と話を切り出した。

いよいよだ。
向葵は固唾を呑んで次の言葉を待った。

「まず、奨学金についてですが、条件により今回給付型の奨学金に変更することができます」
「はい」

「実は奨学金だけのお話ではなく、お願いがあるのです。条件というのはそのことなのですが――」

そこまで言うと一旦言葉を切り、羽原弁護士はテーブルに身を乗り出すようにして両手を組んだ。

そして、スッと目を細め、口角を上げてにっこりと微笑む。

数秒を置いて後、ゆっくりと開いた口が言った言葉に、向葵は耳を疑った。

「……して頂きたいのです」


「え? 今なんて?」


「ある方と、結婚、して頂きたいのです」
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