若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

目を丸くして絶句する向葵に向かって、羽原弁護士は更に身を乗り出してくる。

「誤解のないよう言いますが、これは決して、決して怪しい話ではありません。
ただ、とある方の妻の役を演じて頂きたいのです」

いやいや十分怪しい話ですよ？　と思いながら、目をパチパチさせて向葵は眉をひそめた。

――なにを言っているんだろう？　この人。

早く帰らなきゃだめ。この人、変だ。
心のアンテナがそう告げる。

すぐにでも帰れるように、椅子を後ろにスッと引く。

「妻の役を演じるアルバイト。それを引き受けてくださったら、奨学金はもちろん、礼金として今後大学を卒業されるまで、一切他のアルバイトをする必要がないだけの謝礼もお支払します」

向葵は聞く耳をシャットアウトした。