若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
彼の名は、月井夕翔(つきい ゆうと)二十九歳。

日本有数の企業月井グループ創業者一族の御曹司で、
目下の役職はそのうちのひとつ株式会社月井エンジニアリング――食品や医薬品専門の工場・プラントの計画から施工までを請け負う企業――の常務取締役。

睫毛の一本までも他人の手によって磨き抜かれているような、上流階級でも最上位に属する殿上人である。

旧財閥という歴史ある彼ら一族には、多くの美人の血が受け継がれているのだろう。

月井夕翔は、本当に美しい男性だった。

一八〇センチは超えるすらりとした体は姿勢もよく、シルエットから察するに、ほどよい筋肉がついていることが見て取れる。

彫刻のように、きめ細やかな肌。

長い睫毛が縁取る艶めいた瞳は切れ長だが、その下の涙袋のせいか儚げな色気を帯びて、どんなに見ていても見飽きることはない。

実際はほんの少し目が合っただけで心が跳ねるように動揺してしまうので、とても見つめてはいられないが。
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