若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
「でも、どうして?」

「サービスマンも警備員も、現場を知る必要があったからですが、このことはどうぞ、ここだけのお話ということに」

「あ、はい、はい、秘密ですね。わかりました」

穏やかな笑みを浮かべた矢神は、ゆっくり口を開く。
「突然のことで、驚いたでしょう?」

驚いたどころではない。頭の中は、解けない謎だらけで混乱したままだ。

「一体何を言われているのか、まったく理解できない感じです」

肩をすぼめてシュンと俯く向葵を前に、
矢神は少し困ったように片方の眉尻を下げた。

「戸惑うのも当然でしょう。あなたはまだ二十歳の大学生ですからね」

その声が含む優しさが、彼の人柄にも繋がっていることを彼女は知っている。
彼に対し、悪い印象は一切ない。
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