若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
いくらなんでも、そんな急な話があるものか。

「そんな……」と呟きながら向葵は左右に首を振った。
――そんなの無理だ。

結婚なんて大事な話を、この場で決めなければいけないなんて無茶すぎる。せめて夏梨とか誰かに相談もしたい。というか、やはり断りたい。

「花森さんが断られた場合、別の方に頼むことになるものですから」

「別の人?」

「ええ」

そう言われると、また心が揺れた。
怪しい、絶対に怪しいと思うのに、すごく惜しい気持ちが湧いてくる。

誰か知らない他の女子学生が、『向葵ちゃんありがとう!』と両手を挙げて喜ぶ姿まで脳裏に浮かぶようだ。

かといって……。
途方に暮れる思いで拳を握り、向葵は唇を噛んだ。
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