若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
部屋に入り、ベッドの上に腰をおろして考えた。

どうやらここはパラレルワールドでもなく、いままで自分がいた世界らしい。

『僕と結婚してくれるかな?』

夢の中にいるようにフワフワしたまま、口が勝手に『はい』と、答えていた。

そして、タブレット画面の中から彼が見守る中、既に彼の名前が書いてある婚姻届に書いた自分のサイン。
あの王子さまの“妻”になったのである。

「きゃあああ、どうしよう!」

思わず声に出した向葵は、崩れ落ちるようにベッドに倒れこんで枕に顔を押し付けた。

『それは、君がとてもいい子だし、可愛いから』
脳裏に焼き付いた、彼の甘い声と微笑み。

おずおずと、『どうして私なのですか?』と聞いた時、ビスクドールの王子さまはそう答えたのである。

あれほど綺麗な男の人にジッと見つめられて、『可愛いから』と言われたのである。普通の精神状態でいられるはずがない。

――仕方ないよ、恋愛初心者なんだもん。
向葵はそう自分に言い訳をする。
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