若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
好きな人はいないのですか?と聞くと、彼は、頷いた。

『いない。それに恋愛と結婚は別だからね』と。

『何のしがらみもない相手を選び、周りに利益も不利益も及ぼさない結婚をしたいと思ってね。でもそのかわり、君には迷惑をかけてしまうことになるけど』

迷惑と言われても、思い浮かぶ迷惑はひとつもなかった。好きな人はいないし、二年間戸籍の名前が変わるだけだ。

――人助けだよね? 王子さまの。
自分に都合のいい解釈かもしれないが、それなりに頷ける話だと向葵は思う。

条件は恐ろしいほどいいが、それは別に怪しいことでもなく、実際に籍まで入れるのだから当然だと言われた。

『二年後離婚するとして、十分なだけの慰謝料を彼は用意するでしょう。これから先、生活に困らないだけのお金を得ることもできるのですよ』
羽原弁護士はそう言った。

意地を張るつもりも見栄を張るつもりもない。彼女の言う通りだ。この先の人生、何が起きるかわからない。お金があり過ぎて困ることなど、あるはずもない。
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