愛さずにはいられない

奈央は仕方なく仁の隣に座った。
「ココアもあるわよ。」
「じゃあ、ココア。」
奈央は母のいれてくれるやたらと甘いココアが好きだった。
「はいはい。」
奈央の母がキッチンへ向かうとすぐに奈央が仁に話しかけた。
「気を使わなくてもいいのに。だったら仁の実家に上がったほうがよかったんじゃない？」
「いいんだよ。それにコーヒー一杯ごちそうになったら帰るからさ。」
「・・・もう・・・」
奈央が頬を膨らませると仁がその頬をつまんだ。
「怒んなって。」
そんな二人を奈央の母が微笑ましく見ていた。

仁の前にはコーヒー、奈央の前にはココアが置かれると奈央の母がソファに座った。
「お父さん、いかがですか？」
「もうすっかり元気でしょ？結婚式の時もお酒を飲みすぎるくらいに。仕事も元通りやってるわよ。少しくらい具合の悪いほうがおとなしくていいのに。」
「そんな。お父さんにもよろしくお伝えください。」
「もちろん。仁君が来てくれたこと伝えるわね。」
「なんでよ。私は？」