愛さずにはいられない
「奈央が来たことも伝えるわね。」
「もう、ついでみたい。」
そう言いながら奈央がココアを飲む。
「おいしい。」
奈央の言葉に仁がカップに手を伸ばした。
「甘いよ?」
「あぁ。」
仁が奈央のココアを一口飲む。
「甘いけどこれはこれでおいしい。」
そう言って仁が微笑む。
奈央と仁の距離が近づいたことを母は微笑ましく思っていた。

「そうだ、奈央。」
ふと奈央の母が立ち上がり棚の引き出しから何かを取り出す。
「これ、ずっと渡そうと思ってたの。きっと仁君が奈央が働かなくても苦労しないように稼いでくれてるとは思うんだけどね。結婚資金にしてもらおうと思ってずっとためてたのよ。」
奈央の母は奈央の手に通帳と印鑑を渡した。
「え?」
戸惑って奈央が仁を見る。
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