愛さずにはいられない
「俺も見てもいいですか？」
「もちろん」
仁の言葉に奈央の母が頷く。
そして仁が奈央の通帳を見ると桁違いの額が振り込まれていた。
「お金はあって困るものじゃないけど、でも奈央ばかり受け取るのもなんだかね。絃君の両親にも何かで返すか渡せたらと思うんだけど、それはそれで絃君を思い出して・・・どうかと思ったり。」
奈央の両親もずっと悩んできた。
「だからこのお金は奈央と仁君に預けたいのよ。それで二人のことに使ってももちろんいいし、仁君の両親に必要なときに使ってくれてもいいから。お願い。受け取ってくれる？」
仁が奈央を見ると真っ青な顔をしていた。
「奈央。大丈夫か？」
「・・・うん。」
仁に微笑みかける奈央の表情がぎこちない。
奈央の母も娘の表情の変化を見逃さなかった。
「これは俺たちが責任をもって預かります。今は貯蓄もかなりありますがこの先俺たちも、お義母さんたちも、俺の両親も何があるかわかりません。もしもの時のために受け取ります。」
「そうしてくれるとありがたいわ。これは奈央自身ががんばった成果でもあるから、何かおいしいものでも食べて、あとは困った時のために取っておいてくれる？」
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