愛さずにはいられない

「せっかくの休みなのにごめんな。」
「うんん。私も楽しかった。」
「そうか？」
「うん。それに、また何かあったら助けてね。」
奈央はよく急遽変更になった撮影のヘアメイクを頼んだりしていた。
仁は忙しい時間をやりくりできるときには快くいつも引き受けてくれている。

「持ちつ持たれつだね」
帰り支度をする奈央に仁が自分が送ったマフラーを巻く。
ヒールを履いている奈央よりも頭一つ分は大きな仁が奈央を顔を覗き込む。
「目の下のクマ、ひどいな。」
「うそ。隠しきれてない？」
「あぁ。」
仁が心配そうな顔になる。
そんな仁に心配をかけないようにと奈央は満面の笑みを見せる。
「ドキドキしちゃうでしょ？」
近い距離から自分の顔を覗き込む仁にごまかそうと言った言葉。それでも仁が真剣な顔をしていて奈央は戸惑った。