愛さずにはいられない
「はい。仁はあの通りいつも優しくて、私の選ぶものをほめてくれるんです。そして無条件に支えてくれる。弟の絃は違いました。口数が少なくてぶっきらぼうで。自分が違うと思うとはっきりNOというタイプでした。でも相手を誰より考えてくれていて・・・。」
「奈央ちゃんへの助言も、奈央ちゃんを想っての言葉だったんだ。」
莉子がすべてを悟ったように奈央に微笑みかける。
「はい。」
「そっか。」
「莉子さんは大悟さんといつからのお付き合いなんですか?」
「私たちはいわば腐れ縁かな。ずっと昔から一緒だった。美容学校も一緒だったし。夢を追いかけ始めた時も一緒の方向を向いてた。今なんて365日ほとんど一緒だしね。仕事場でも、家でも。」
そう言って莉子が大悟を見る。
「でも、ずっと一緒にいてもずっと同じじゃないの。何歳になっても大悟は変化してるし、何歳になってもどきどきすることがある。」
奈央は仁を見た。自分たちもそうなれるか・・・
「なれるわよ。奈央ちゃんと仁君も。」
莉子は言葉にしなくても相手の言いたいことを察するのが早い。
「だって奈央ちゃんを見る仁君も、仁君を見る奈央ちゃんも、とってもいい顔してる。見てるだけで恥ずかしいくらい。」
「莉子さんっ。」
ひやかす莉子に奈央は耳まで赤く染めた。
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