愛さずにはいられない
ふたりの新居はデザインは完成し、設計図もほとんど完成している。何度か打ち合わせをして微調整をしてから内装に選ぶシンクや家具など決めたり、壁紙を選ぶ段階まで進んでいた。
「楽しみだね。おうち。」
「あぁ。俺の店もそこに移転する予定だから、今までよりは一緒にいられるな。」
「うん。」
仁は自分の美容室の本店を自宅へ移す計画を立てている。
新居には離れを作り、新人が泊まり込みもできるように考えていた。
「ねぁ、仁。」
「ん?」
「ひとつ相談があるんだけど。」
「どうした?」
「私、もう一度メイクの勉強がしたいの。」
「メイクの勉強?」
「そう。専門学校は出てるけどもっと現場で勉強がしたい。」
「メイクの?」
「うん。」
奈央はずっと自分の心の中にあった想いを伝えた。
「メイクすることが楽しいの。もっとたくさんメイクについて勉強がしたい。記事を書く作業ももちろんやりがいがあるけど、現場やスタジオにいて作業をしているほうが私には向いているんじゃないかって思うの。」
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