愛さずにはいられない
『・・・・・・・』
ノイズのあとにかすかな声が聞こえる。
『ここでもう少しアクセント効かせて・・・・奈央・・・』
大きなノイズの中にかすかに聞こえる声。
その声を仁と奈央が聞き間違えることはない。
「絃・・・」
その声は絃の声だった。
『じゃあAメロからもう一回』
絃はこうして奈央に何度も自分の曲のイメージを伝えてきた。
譜面には落としきれない表現を奈央に伝えてくれる。
絃の説明はわかりやすくて奈央は曲のイメージを膨らませやすかった。

『奈央・・・』
何度も絃が自分を呼ぶ声が聞こえる。

奈央は機械の前で全神経を自分の耳に集中させた。

やがて奈央の歌が始まる。
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