愛さずにはいられない

「奈央、もう少しだ頑張れ。」
仁が奈央の手を握りながら奈央に声をかけ続ける。
「奈央さん、次に波が来たら大きく息を吸ってその息をなるべく長く吐きながら力んでね。もう少しだから頑張ろう。」
理恵が奈央に声をかけ続ける。
奈央は真っ赤な顔をしながら頷いた。

「奈央さん深呼吸しよう。赤ちゃんに酸素送ってあげようね。」
「奈央、深呼吸しよう。ゆっくり。ゆっくり。」
仁は過呼吸気味の奈央に自分自身も一緒に呼吸をしながらそのリズムを伝えていく。
「ご主人は次の陣痛が来たら奈央さんの頭をぐっと呼吸に合わせて押してあげてください。奈央さんが自分のおへそを見るような体勢にするイメージ。」
「はい。」
理恵が的確に指示をしていく。どんな時も冷静な理恵に奈央も仁も冷静に戻れた。

奈央の陣痛が始まったのは前日の朝方だった。
痛みに夜眠れなかった奈央。すぐに仁もその様子に気が付いて起きてくれた。
そこから陣痛に耐えて２４時間以上が経過している。