愛さずにはいられない
奈央は陣痛の合間に深呼吸しながら自分が力づくで握っている仁の手を心配して撫でている。
大切な仁の手をけがさせていないか確認すると仁は
「気にすんな。大丈夫。頑張ろう!」
と言って奈央の手をさらに強く握り返す。

仁は腰をさすったり水を飲ませてくれたり、汗を拭いたりと奈央と一緒に出産に臨んでいてくれた。この日のためにずっと仕事もセーブしてくれている。

「きた・・・」
奈央の言葉に仁が奈央の呼吸を見ながらサポートをする。
「奈央さん、ゆっくりゆっくり息を吐くイメージで・・・そこで止める!力んで力んで!もっともっともっと!」
理恵の声に奈央は必死にこたえる。
「もう少し、もう少し!・・・・はい!息吸って~。次は息を吐きますよ。はっはっはっはっ・・・赤ちゃん生まれるよ!目を開けて!」
理恵の声に奈央は泣きそうになる。

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