愛さずにはいられない
「じゃあ、俺行ってくるわ。絃。」

しばらく絃のお墓の前にいた仁はそういうと立ち上がり背を向けて歩き出した。





絃と奈央の結婚式はとてもあたたかい雰囲気で行われた。


奈央は涙が出そうになった。
目薬の力をかりずに一日過ごすことができたのは事故以来はじめてだった。

瞳から涙が流れ出たわけじゃない。

それでも悲しみではなく、喜びでも人は涙を流すことができるのだと思い出した瞬間だった。



隣にはタキシード姿の仁がいる。奈央がふと仁を見ると仁が必ず微笑み返してくれた。

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