BITTER LOVE
「勝手にすまない」
「母は…大丈夫でしたか…?」
「お母さんには会ってない
親父さんの病院に行ったから」
「そうですか…」
お母さんは私が居ない家で生きていけるのかな…
「親父さんも今はお前とお兄さんが距離を置くことが一番だって言ってた
友達の家にしばらく泊まるってことにしてあるから」
全てを投げ出して
逃げてしまってもいいのかな
兄と会わなくていい安心と同じくらい
不安が襲ってくる
そんな私の気持ちを全部見透かしてるみたいに
「大事にするんだろ?自分のこと」
背中を押して
「行く当てがない間はここを使えばいい
もう充分巻き込まれてるしな」
欲しい言葉をくれる
「先生…」
「ん?」
「ありがとう…ございます…」
「あぁ」
いつも通りの冷たい言い方
でもすごく暖かい…
「明日親父さんの病院に荷物取りに行ってこい」
「はい…」
先生のおかげで止まったままの時間が少しずつ動き出して
前を向ける気がした