BITTER LOVE
願い
鞄から鍵を出してドアを開ける
特にすることもなくソファーに座っていると
ぐー
そういえば今日はお昼メロンパンだけだったっけ…
明日からどうしようかな
毎日売店だとお金もたないし
先生今日は何時くらいに帰ってくるのかな
前に置いていってくれた置き手紙に確か電話番号…
携帯を開いて番号を打つ
ショートメッセージ
" 何時に帰ってきますか? 谷原 杏 "
送信
メールボックスには未開封のまま増えていく兄からのメール
目を逸らして画面を閉じる
返信を待っているつもりだったのに、どのくらい経ったか分からないけど気づいたら寝ていて
肉じゃがの匂い…
「起きたか」
先生の声
さっきはこっちを一回も見ずに通り過ぎて行ったのに
今は私に視線が向いてる
そんなことで嬉しくなる
「ほら食え」
「ありがとうございます…」
「いただきます」
美味しいー…
喉まで出かけた言葉を抑え込んだ
また子供って思われたくない…
「先生ってお昼どうしてるんですか?」
「売店」
「もし夜ご飯余ってたら…明日持ってってもいいですか?毎日売店だとお金が…」
バイトもしてないし、家にお金だけ貰いに帰るわけにもいかない
「ない」
「え?」
「食う量しか作らないから余らない」
「あ…そうなんですね」
そうだよね…
先生きっちりしてるしね
それからは二人とも無言のままご飯を食べ続ける