BITTER LOVE
「大丈夫…
ごめんな、怖かったよね」
先輩が背中をさすってくれる
大丈夫…
言い聞かせるように心の中で呟いた
最近ずっと忘れてた…
もうあんな生活に戻りたくないよ…
「おい、どうした?」
そう聞こえた瞬間、真っ黒な霧が晴れてくみたいに頭の中がその声でいっぱいになる…
「下校中変な奴らに襲われかけて、走って引き返してきたんですけど…」
先輩が状況を説明すると
「立てるか?」
しゃがみこむ私を覗き込む先生と目が合った
顔を見たらなんだかすごく安心して溢れそうになる涙を必死で抑えた
「2人共車で送るからとりあえず保健室で待ってなさい」
そう言われて先輩と保健室に向かう
「大丈夫…?」
心配そうに先輩が聞いてくる
「はい…すいません心配かけて」
「よかった」
ギュッ…
そう言うと2人きりの保健室で急に抱きしめられた…
「先輩…」
「俺じゃだめ?」
「え…」
「椿様来ただけで杏ちゃんすげぇ安心した顔するし、嫉妬でおかしくなりそ」
「……」
「初めて誰かのことこんなふうに…好きって思えたんだよね」
抱きしめる腕が弱々しくて、いつもみたいな冗談じゃないんだって分かる…
ドアが開く音がして先輩が私から離れた
「襲ってきた人達に心当たりは?」
保健室に入ってきた先生がそう聞く
「全く無いっすね」
「そうか、谷原は?」
「私も無いです…」
兄の顔がよぎったけど言葉にはしなかった
その後先輩と先生の車の後ろ座席に乗りこむ
車内にはずっと沈黙が流れてて、時間がすごく長く感じた…