クローバー
ってたから。壊れることのない、理想的な二人だった。それが理不尽な理由で別れると知って、苦しかった。心ではチャンスだと思ってた。でも、だんだん艶っぽく、美しくなっていく茉衣さん。毎日目が潤んでいて、関係を持っていることを感づいた。切なかった。寂しさを性行為で埋めて、愛を確認し合うまで苦しめ、追い込まれていたこと。そして、別れた後に気付いた妊娠、隠し通された出生。…偶然を装って会うために、10月頃に、短大の外で待ち伏せしていた。もちろん出てくる事は無かった。罪を犯したのは僕もだ。出産したこと、知っていた。それが遥紀の子供だって。…聞いてしまったんだ。友達の話。」


茉衣の友人達は短大の帰り、

「今日茉衣の所行く?」
「うん、行く行く。」

陰で米野は聞いている。

「茉衣の赤ちゃん見に行こ?」
「…茉衣、ハルに認知求めればいいのに。」
「だよね。慰謝料取れるよ。だってハルとの間に産まれた娘でしょ?」

米野は聞いてしまう。

(!?…娘?)

「上手くいけば、復縁して結婚できるのに。」
「でも、別れるの知っててカラダ奪って妊娠させても気付かずにいる無責任な男を信じれる?」
「またあの無責任男に似たのよねぇ。」
「うん、そっくり。生き写し。かわいそう。」
「…かわいいのは事実だよ。茉衣、溺愛してるし。抱いてはキスしてる。」


「はぁ…はぁ…。」

真実を聞いた米野は息が荒くなる。

「気持ち悪い…吐きそうだ…。遥紀の…娘?…遥紀は、悩んでいる。今でもサナを愛している。…遥紀は、遺伝子を継いだサナとの娘の存在を一生知らずに死んでいくのか…?…忘れよう。聞いてないんだ。これは…。」


「罪悪感だよ。忘れようとしても忘れれない 。たまに帰って来る遥紀。浮かない顔をして、元気はない。変わらない気持ちを見てて辛かった。ある日、通り掛かった公園で、一人の女の子がふわふわなボールで遊んでいて、こけた。」


「大丈夫?」

手を差し延べると、

「うん…ありがとう、お兄ちゃん。」

見つめ合う。
米野は、

(…遥紀に似てる…。)

「へへっ、転んじった。」

笑う女の子。

「強いね。」

米野が言うと、

「ママがいるから。へへっ。まり、強いでしょ?」

「茉莉〜
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