クローバー
。」

呼ぶ声。
女の子は走って、

「ママぁ〜。」

抱き着く。茉衣だ。茉衣は茉莉のひざの傷に気付き、

「痛かったでしよ。」

抱いて、

ちゅっ。

キス。

「まりも。」

ちゅ〜っ。

陰で見ていた米野。

「…サナ。…あの子が…遥紀の…娘。」


「見たんだ。遥紀に似たかわいい女の子がサナとキスし合ってた。溺愛して。」

真治は、

「お義姉さんの茉莉ちゃんへのキスなんて毎日。僕も気付いていたよ。父親の正体。結婚する報告に行った時のお義姉さんの不自然な動揺。帰って調べたら、そっくりな男。更に調べると恋愛へのトラウマ。好きなまま別れた事。後日、妻とお義姉さんが話している時、こっそりお義姉さんの部屋に忍び込んで調べたら、卒業アルバム。メッセージ。写真。証拠を掴んだ。おそらく父親は妊娠のことさえ知らない。何て悲しい事だろう。オレが言いに行ってもよかった。でも信じる?お義兄さんは素直だから信じたとしても自然に知ってしまった真実より傷付く。居場所を教えたにしろ、乗り込んだらお義姉さんも傷付く。もちろんオレの信用も失い、沙衣の、妻の涙も見るし、家族からも離されるだろう。だから知って知らないふりをした。義弟の異常なほどの憎悪と、お義父さんの愚痴を痛い程わかっていた。」

「お義母さんはお義姉さんの深い愛に気付いていて、悪い人には思えないと少し理解していた。でも、沙衣との関係に支障をきたしたのは事実。あれがあったから守りたいと人一倍思えたし、他の人には目が行かないし。過剰な自信なんてないよ、沙衣のものだけでいい。家族の笑顔に癒される。幸せに思える。」

心から言う真治に米野は、

「結婚…したくなったかも。彼女はいないよ。気になる人だけ。」
「いちかばちか告白したらどうかな?告白、何回も沙衣に拒まれて…何回したかなぁ?数えきれないかも。諦めるなんていけない。」
「うん。ありがとう、坪倉くん。」
「真治でいいよ。苗字で呼ばれるの慣れないな。」
「真治。じゃあ僕も宏明だよ。」
「会えてよかった、宏明。」


真治は沙衣のもとに戻る。沙衣は、

「郁、寝ちゃった。疲れたのね。横にハルカが寝てると、兄弟みたい。ほらね。ふふふ。茉莉、二人を優しく見てる。お姉さんね。」
「うん。」
「そ
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