クローバー
友人は、

「乗り気じゃないねぇ遥紀クン。」

にやり。

「もしかして伝説の鍵を握る人だったりして。当事者だとか?奥さんも同じ高校だったよね?」

遥紀は汗だくで、

「当事者…ではない。」

隠す。
友人は、

「遥紀クンの奥さん、高校時代の彼女だよねぇ。」

遥紀は、

「…そうだけどそんな伝説知らない。」

必死な嘘。


「はぁ…。」

遥紀はため息をつく。
友人は。

「遥紀クン。恥ずかしい?」

抱き着く。

「…恥ずかしいというか、…オレをはめるとしか。」
「奥さんとの約束の場所だろ?久しぶりに行くと、当時の記憶を思い出して、ますます奥さん大好きになったりして。」
「…茉衣しかいないよ。…あの頃、最後に、あそこで抱き合った時には茉衣のお腹に茉莉がいたと思うと自分の罪を痛感してしまうんだ。理由はどうであれ、捨てて、背負わせてしまったのは事実だ。オレは茉衣と茉莉を捨ててしまったんだよ。消えない罪なんだよ。」
「…奥さんは恨んでいないさ。」
「わかってる。でも…捨ててしまったのは事実だ。恨まれることしてる。たくさん殴られてるし、信用もない。だから行っていいものかわからない。」
「奥さんは遥紀との幸せを選んだ。」
「…。」


家へ帰る遥紀。茉莉と茉衣が迎えてくれる。

「おかえり、パパ。」

抱き着く。
茉衣は、

「どうしたの?遅かったね。」
「…ああ、会議だ。」

茉衣は遥紀を心配する。


ハルカを抱いている遥紀はソファーに座って茉莉と話している。

「ハルカ、いい子にしてたか?会いたかった。」

ハルカは喜んでいる。茉莉はハルカをなでなでしている。


夜は更ける、
二人の寝室。

「何かあったの?浮かないカオしてる。」

遥紀は茉衣を抱いて、

「茉衣との大事な場所からの収録になりそうだ。」
「え?」
「…高校の裏庭。別れる前によく行ってた場所。」
「え…。」
「結婚式に聞いた噂。確かめようと。言ってる本人はわかってるよ。それがオレと茉衣の事だって。知らない女性アシスタントが乗り気でさ。素敵な話って。」
「…でも真実は茉莉を身篭った茉衣を捨てた。…行くと拒絶しそうだ。きれい事ではない。」

茉衣は
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