クローバー
駆け落ちしている遥紀は真実は言えない。

「たまたま通り掛かりに気に入ったんだ。カッコイイだろ?」

「そろそろ遥紀も彼女作れよ。29だろ?昔の恋を引きずってないでさ。今を楽しもうよ。」

ディレクターの友人が言う(大学の同級生なので茉衣との関わりはない。)

「…。」
「飲みに行く?っていってもお酒はご法度。」
「いい…女の人と関わりたくない。」
「カタいなぁ。」
「結婚する気もない(実は茉衣としたいけどあくまで駆け落ち。出来ないことくらい自覚している。)。なのに会う方が酷だろ。無理矢理女と寝て、心がないまま子供ができても、認知する気はない。悲しませるだけだ。」


茉衣は、パートの帰り。
近所の人。

「茉莉ちゃんの父親と暮らしてるの?」
「…知られてしまったのです。彼は、真実に、娘と会いたい。と言ったんです。彼は眠っている茉莉に優しく触れるなり、ずっと側にいると囁いていた。添い寝して、朝、起きた茉莉に、パパだよ。と話して。もう離さないと抱いていたのです。それから彼は来た。…駆け落ちですから誰にも話せない。彼は、親、兄弟を捨てて来ている。…もう後戻りできないの。一番愛してる人と、娘との生活。」
「寝たの?」
「はい…。好きな気持ちはあの時のまま。好きなまま、別れてましたから。彼の両親の恨みを受ける。…それでも、彼が欲しい。」


茉莉と遥紀のだんらん。

「パパは茉莉の事好き?」
「好きだよ。」
「ママも?」
「もちろんだ。ママを忘れた時はなかった。」
「…なら、どうしてママを捨てたの…。」

茉莉は涙。

「ご…ごめん。」

遥紀は涙。
茉衣は見ていた。

「茉莉、やめなさい!パパをけなすのはいくら茉莉でも許さない!…パパは…ママのせいなの。…パパは茉莉をお腹に宿して、産まれていることさえ知らなかったの。…責めないで。ママが悪いの。パパに言わなかった。ママの責任よ。パパは何も悪くない。今度パパを責めたら許さないから!」
「ママ…。」
「もういい…茉衣。私が悪いんだ、何も気付いてあげれなかった。茉衣を放置して、無責任だ。…私は、茉衣と茉莉を捨てた最低な父親なんだよ。茉莉に責められても仕方ない。」
「…遥紀。」

遥紀は茉莉の部屋から出ていき、茉衣との寝室へ。


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