クローバー
み会。多恵子は酔って気持ち悪い。

「…う。」

トイレで吐いている。
出てくる。すると、

すりすり。

背中を摩ってくれる人。

「…末松先生?」
「えらいのでしょう?飲まない方がいい。私が言っておきますのでゆっくり休んで下さい。」
「…ありがとうございます。」


「その時先生に感情はあったのですか?」
「まだなかったですね。同じ職場から付き合うなんて考えていなかったから。ただ、ほっとけなかった。似た年でもあるし、悩んでいて。最初は私も悩んでいた時期もあって力をあげたかった。多恵子は後で言っていたけど、心の中で不思議な感情が出てたみたい。」
「いつから意識し始めたのですか?」
「体育祭くらいからですか。リレーの時、先生チームもあるでしょう?各学年の先生が女の先生は2回、男の先生が約3回走るんだ。まだ若かったから、3回になったんだ。たまたま2回は多恵子に渡す事になっていた。三田君こそ奥さんに渡していたくせに。」
「そうですよ。茉衣に渡すとみんなに仕組まれたんです。付き合っていたのは知られていましたから。」


「あ…足早い。」

多恵子は政治から渡される時に、

「頑張って!」

と励まされる。多恵子はその瞬間、

ドキッ!?

感情が芽生える。
走り終え、少しして、また頑張ってと言われ、心がドキドキして仕方ない。


競技を終えた多恵子は心ここにあらず上の空。政治は、

「いゃあ、我ながら大人げないですねぇ。本気出してしまった。」
「先生速かったですね。」

多恵子は上の空。

「あれ、紀平先生どうしました?」
「…。」


帰り、心配した政治は多恵子を呼び止める。

「元気ないですね。何かあったのです?」
「…。」

政治は多恵子を優しく誘う。


やはりドキドキして喋れない多恵子。心配な政治。
路上。

「ゆっくり、落ち着いてからでいいから相談欲しいです。もしや、欝陶しいですか?…世話焼きなのはどうしようも…。」

多恵子は背伸びして政治にキスをする。

「!?」

うるうる。

多恵子は涙ぐむ。

「ごめんなさい…。」

走る。残された政治。

「…今…確かに…泣いてた。キ、キス!?」


涙に暮れている
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