クローバー
宿ったその時から愛しくて。母親になった。新学期にみんなに話して、一緒に服を買いに行った事。入籍して、苗字が変わって、ソファーで毎日優しく抱いてくれた事。お腹がだんだん大きくなって、優しく撫でてくれて、動いた時、動いた。と感動してくれた時、無邪気に父親になる事を喜んでいた。」
「そりゃ嬉しいだろ。」
「実感する父親という意識。何度も撫でてくれた。産休に入って、お帰りのキスをして、あ〜んして?とじゃれ合ったり。」
「お…おい…それは恥ずかしい。」

(へえ〜、あ〜んか。有り得るけど考えるとびっくり。)

じろ〜。

「し、しないのか?」
「無かったです。娘の前ではできません。」
「あ、そうか…既に女の子がいたんだったな。」
「いいじゃん、あれは新婚でしかできないし。」
「…そうだな。」
「照れてるの?平気だったくせして。」
「…。」
「嬉しい事は重なってもいいですね。」


沙衣の家。郁はやはり茉莉のところへ。ハルカを抱いている茉莉。郁も甘える。

「お姉ちゃん。会えなくて寂しかった。」
「郁は幼稚園どう?楽しいよ。」
「うん。」

にこっ。

「あのね、年長さんになったんだよ。」


1年前の郁の入園式日。真治は一人でいる。
奥様方は真治を見るなり。

(きゃっ、カッコイイ…。)

的になっている真治。真治は気付いていない。
保母さんにも、

(あの方、誰のパパ!?)

みんな目がハート。

「王子様だわ…。」

そこへ、

「真治、ごめん。」

身重な沙衣が来る。

「ごめんなさい、お腹の子供がよく蹴っちゃうから…。」
「いいよ。」

真治は沙衣のお腹をなでなで。沙衣は、

「もう…真治ったら。あんまりくっついたら恥ずかしい。沙衣があまりにかわいいから。」
「…。」

奥様方。

「王子様だわ…。妊婦の奥さんをエスコートしてるし。いいなぁ。うちとは大違い。」
「は?」

旦那は言う。

「あれはムリだって…きれいすぎる夫婦。」

保母さんは見入っていた。

「…カッコイイ人。キレイすぎる…。…あのお母さんは…確か。」

保母さんに想いを寄せる保父さんは、

「ひかりさん…。」


奥様方の真治の人気はすごいもの。
< 191 / 197 >

この作品をシェア

pagetop