クローバー
「あの時調べる為に撮った、盗撮した写真さ。寝室に置いてある。…こんなに愛しいなんて。はぁ…何て事したのだ。いくら懺悔しても消えない罪。…死ねばいいなんて思っていた。覚めたのは、病院でお前が泣いている茉衣さんを抱いていた時、茉衣さんの素直な気持ち、過去の過ちに気付いた。別れさせて、お前は待って欲しいとせがんだ。」
「…離れたくなかった。別れが近付く程、寂しくなって、会えば寝ていた。別れた時、幸せを願ったはずなのにずっとひきずっていて、毎日のように会いたいと思った。大学へ行っても、茉衣の事ばかり考えていた。書きかけて、止めた100枚以上の手紙、涙で濡れた茉衣の写真。寂しくて、何て非情な父さんだと恨んでいた。働いて、見合いを勧められる、そんなのいらない!と怒鳴った日々、頭の中には茉衣しかいなかった。産まれて、成長していた茉莉。再会した時、子供がいて、結婚して幸せになってると思ってた。…全てを知って、娘との時間は戻らないけれど埋めたいと。父さん、時間は戻らない。会って欲しい。娘の為に。おじいさんやおばあさんが必要なんだ。」
「…わかった。拒絶しても、父さん達を守るから。きっとわかる。」
「…。」


受話器を置く。

「…遥紀。」

心配する茉衣。
遥紀は、ちゅっとキスして、

「大丈夫だ。茉衣は心配しなくていい。」
「はい。」
「…そういえば同窓会の葉書きてたみたいだけど3か月後だけどどうする?」
「…経過によるかなぁ。産後だし。赤ちゃんもいるでしょ?」
「…驚かしたいな。オレ達別れた事になってるじゃん。みんなにどっきりで報告したいなんてね。」
「ママと沙衣と弟のお嫁さんに頼んでおくわ。ただ、当日は体調に相談だけどね。」
「茉衣、愛してる。」
「私もよ。」

ちゅっ。


次の日の昼から、茉衣と茉莉は手を繋いで学校へ行く。
茉莉はまだ少しふらふらするものの、安定していて、茉衣を気遣う。

「ママ、大丈夫?」
「ん?こうやって歩くのも大切だよ。だって、元気な赤ちゃんがいいじゃない。ね?」

にっこり。


学校。
担任は、

「茉莉ちゃん!?」

びっくり。

茉衣は、

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」

担任(男)は茉衣のお腹に、

「真田さん、どうされたのです?」
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