クローバー
「ママもいるんだよ。」
「ママ…。」
「抱いてあげて?」
「こうすればいい。」

遥紀の兄は赤ちゃんを茉莉にゆっくり渡す。
茉莉は赤ちゃんの笑うカオを見る。

「紀里、よかったなぁ、お姉ちゃんに抱かれるなんてね。」
「…。」
「ごめん、…茉莉ちゃん。…弟についているのが憎かった。…弟と茉衣ちゃんの関係は知っていたし、堕落していく弟も見ている。部屋でぐったりしていて、こもっていた、それは憎い茉衣ちゃんのせいだと洗脳されていた私は、静観して、忘れるのを待っていた。親に度々反発した弟。私の結婚を知った時、兄さんはいいよね。と皮肉られ、殴り合いになって、今思えば寂しいカオをしてた。殴っても、殴られても、弟は寂しかった。」

遥紀は、

「優遇されてた兄さんが羨ましかった。オレは離された。一時も忘れた事なんてない。寝ても覚めても、朝も昼も夜も茉衣の事を考えていた。何でオレは愛する人と引き離されて、兄さんは結婚できる。苛立った。精神的なダメージは大きい。寂しくて狂いそうで、寂しくて、このまま死んでもいいと思ってた。生きてても仕方ないと、でも、茉衣に元気なしるしを伝えたかったから働いて、喋って、聴いていなくていい、もし聴いていたら、オレは元気だと残したかった。真実を気付いた時、茉衣を捜し当て、強引に追求しても吐かなかった。でも確信していた。何とか呼び出して、茉衣は泣きながら真実を話した。やっと結ばれた。…なのに魔の手は茉莉に迫っていた。」

兄は、

「…睡眠薬を飲ませたのは私だよ。すぐに眠ってくれた。副作用のことを知らずに。…血を吐いて、息をしなくなった。遥紀は必死に息を戻そうとしてた。病院に行って、ぐたっとなって、全部あげる、カラダをあげていい、私が代わりに死んでもいい、助けて欲しい!やっと会えたのに…ダメな父親だけど愛する娘の為なら自分の命などいらない!医師に訴えていた。茉衣ちゃんと合流して、泣き崩れる茉衣ちゃんを抱き寄せて。本当に父親として。弟は、遥紀は茉莉ちゃんを愛してる。大切にして欲しい。私たち家族は何度と罪を犯した。遥紀だけでなく、遥紀の愛する家族まで。私は、その罪のせいで茉莉ちゃんから遥紀が嫌われる事だけはいけない。遥紀を頼むんだ。」
「…パパ。」
「ほら、行って来るんだ 。」

茉莉は紀里を兄に渡し、遥紀の元へ、
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