クローバー

「彼女の兄弟はベビーラッシュです。」
「そうか。真治君もパパか。」

若い人は、

「広田さん、取材とは…？」
「まだわからないのかい阿倉川君？彼が誰かと。」
「…はい、わたしにはさっぱりと…親密なのはわかります。私がいていいのかと…。」
「あの時と変わらないオーラを持ち合わせている。衰えてはいない。彼をみて、どう思う？」
「…はあ、顔立ちはしっかりとした美形で、どこか気品があって…。」
「キミの志望動機は？」
「それは…。」
「すぐそこにいるではないか。彼がその約８年後の姿だとすると？」
「え？」

真治はにっこり。

「いきなり辞めたモデルですよ。今は普通のサラリーマンですけど。あ、これ、今の写真です。広田さんの事聞きました。妻の家族や周りの事がありますので後ろ姿ですけど、息子と仲良くじゃれてる写真です。」
「載せないけど、いい写真は？ただ、見たいだけだ。」
「わかりました。」

一枚の写真。

「広田さんだけですよ。」

沙衣と寄り添う真治に郁がちょこんといる写真。

「彼女、また美しくなったね。母親の顔だ。お腹もふっくらさして、幸せそうだ。息子さんも、真治君そっくりだ。大人になったらかなりの男前になる。ありがとう。返すよ。」
「モデルを辞めて、結婚して、子供が生まれて、３０代になり、公にはできないけれど、元気にしているという証を残したくて。…３か月くらい後の方がいいです。子供が産まれる頃まで。…最初は無事に産まれるかわかりませんでした。思うように育っていなくて、妻は不安げにしてました。安定したものの、負担を与えたくない。」
「わかった。」
「そういえば、広田さんが最近、興味をもっているウラ情報なんてありますか？」
「気になる？…ああ、今、テレビ業界で狙ってるのは、ＤＪらしいと。昔の彼女との結婚、子供騒動に揺れた人。オファーがたくさん来てるらしい。」
「…へぇ、いいこと聞きました。」
「知ってるのか？」
「まぁね、知り合いですよ。妻と彼の奥さんが仲間ですから家族ぐるみの関係ですね。子供も知ってますし、お互いよくしゃべりますから。」
「…え？…阿倉川君、少し席を外してくれ。」
「…はい。」

助手は席を外し、二人きりになる。

「関係は？二人きりなら言えるね。」
「…内緒ですよ。