クローバー
赤ちゃんがいるの…だから…。」
「何だと!お前という男は!!」

父は遥紀を掴み、壁に当てて、何度も殴る。

「そのカオを壊してやる!!」
「やめて!…う!?」

お腹を押さえて血を出す。

「茉衣!」

遥紀はとっさに茉衣を抱く。
それを見た弟は血相を変え、

「姉さんを離せ!汚い手で触るな!!」

殴りかかる。
沙衣は茉衣に寄り添う。
茉衣は何度も吐きそうになりながらも、

「礼衣、やめて、やめなさい!!」
「悪魔!!」

弟は遥紀に吐き捨てる。
父は、

「よくも娘を妊娠させては捨ててぬけぬけと現れたな!!」
「…ごめんなさい。」

遥紀は何度も謝る。
弟は、

「どれだけ姉さんが泣いてたか!妊娠を悪く思って、家を出なければいけなくなった。そして、新しい環境に慣れず、すぐに生まれた!お前は姉さんの未来を奪った悪魔なんだよ!!」

殴る。
遥紀は倒れて、

「はぁはぁ…。」

息を切らしてもごめんなさい…と謝る。

「パパ、礼衣、やめて!」

弟は、

「姉さんはこの悪魔に騙され続けるのか!…子供のいない僕にこういう事は言いにくいけど、姉さんの命の危険性がなく、もっと早ければ、無理矢理にでも堕ろさせた!お前には父親の資格なんて無いんだよ!!」

殴る。

「…ごめんなさい…ずっと愛していました…忘れた時なんて…一度も無かった…。」
「礼衣…もうやめて!」

遥紀は茉衣に、

「…いいよ。…私は…確かに茉衣と寝て…捨てた…最低な…尻軽男だ…。」
「そんな事ない、遥紀は何も悪くない!!」
「…庇うのは…切なくなるだけ…茉莉…茉莉!…愛しい娘…。」

遥紀は気を失う。

「パパも礼衣も大っ嫌い!暴力で責めるなんて最低!!…別れるしかなかった。淋しくて淋しくてカラダを合わせて茉莉ができた。茉莉は遥紀と私の天使なの、二人の結晶なの!!」

お腹をさすって、

「この子の前でパパを責めないで!この子の父親なのよ!!…お願い、助けて!好きなの。私に、人を愛するということを教えてくれたの。茉莉にとって優しい父親なの。…高校1年に、初めて同じクラスになった。苗字が似てて隣の席になった。班での話し合いで向かい合わせになった時、優しさにドキドキしたの。
< 77 / 197 >

この作品をシェア

pagetop