バッドジンクス×シュガーラバー
「俺は使ったことないが、写真を撮るだけで動物の耳やヒゲが勝手につくなんておもしろいな。かわいいかわいい」

「心がこもってません……!」



反射的にそんな返しをしてから、ハッとした。

いや、今抗議すべきは、そこじゃなかったような……?



「心外だな。ちゃんと、本心から言ってるのに」



自分の発言に自ら困惑している私の耳もとへ、久浦部長が顔を寄せる。



「かわいい、小糸。こんな猫なら、俺が飼ってやりたいくらい」

「……!」



バッ、と勢いよく右耳を片手で押さえながら、後ずさった。

おそらく真っ赤な顔をしているであろう私を見つめる部長は、なおも意地の悪い笑顔である。

からかわれたのが悔しくて、だけどとっさに言葉が出てこない。下唇を噛みながらその目を見返した。



「朝の職場前でする顔じゃないぞ、それ。自覚してるか?」

「知りません……っというか、ぶ、部長のせいですよね?!」

「俺のせいか。それはそれは、光栄だな」



……ダメだ。何を言っても、この人にはなんのダメージも与えられずに憎たらしいほどの笑顔を返されてしまう。

熱を持つ頬を両手で挟みつつ、深く息を吐いた。
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