バッドジンクス×シュガーラバー
「……と、俺は思っているんだが。小糸は、どう思う?」
「え、どうって……」
唐突に話を振られ、しどろもどろになる。
部長は、思いのほか真面目な表情で私の答えを待っている。
その眼差しが、まるで特別な意味を含んでいるものに思えてしまって──逃げるように、目を泳がせた。
迷った末、控えめに言葉を紡ぐ。
「私も、別に……社内恋愛だって、いいと、思います」
なんとなく偉そうな発言になってしまった気がするけれど、言ってしまったものは取り消せないしこれ以上頭を働かせることも無理。
ポツリとつぶやいた私の言葉を聞いて、久浦部長は頬を緩めたようだった。
「そうか」
それきり部長が口を噤んだから会話が途切れ、ただ私たちは歩みを進める。
けれどなぜか、その沈黙を嫌だとは思わなかった。無言のまま並んで歩いているだけでも、不思議と息が詰まったり罪悪感が芽生えない──異性相手に自分がこんなふうに思えるなんて、自分でも驚く。
「……あ」
ふと隣を歩く久浦部長が漏らした声に、うつむかせ気味だった顔を上げた。
前方の少し離れたところに、ふたり並んで歩く男女の姿を見つける。……えみりさんと、牧野さんだ。
「え、どうって……」
唐突に話を振られ、しどろもどろになる。
部長は、思いのほか真面目な表情で私の答えを待っている。
その眼差しが、まるで特別な意味を含んでいるものに思えてしまって──逃げるように、目を泳がせた。
迷った末、控えめに言葉を紡ぐ。
「私も、別に……社内恋愛だって、いいと、思います」
なんとなく偉そうな発言になってしまった気がするけれど、言ってしまったものは取り消せないしこれ以上頭を働かせることも無理。
ポツリとつぶやいた私の言葉を聞いて、久浦部長は頬を緩めたようだった。
「そうか」
それきり部長が口を噤んだから会話が途切れ、ただ私たちは歩みを進める。
けれどなぜか、その沈黙を嫌だとは思わなかった。無言のまま並んで歩いているだけでも、不思議と息が詰まったり罪悪感が芽生えない──異性相手に自分がこんなふうに思えるなんて、自分でも驚く。
「……あ」
ふと隣を歩く久浦部長が漏らした声に、うつむかせ気味だった顔を上げた。
前方の少し離れたところに、ふたり並んで歩く男女の姿を見つける。……えみりさんと、牧野さんだ。