バッドジンクス×シュガーラバー
「おまえら、もし小糸に『自分の意思は関係なく、かかわった異性を不幸な目に遭わせる』なんてトンデモ機能がついていると知ったら、どうする?」

「え?」

「部長っ?!」



またもやハモった牧野さんとえみりさんの声に被るように、私もとっさに大きな声を上げてしまった。

いきなり部長、何を言い出すの?!



「えぇ? 急になんですか、部長」

「かかわった異性を不幸な目に、って……それ、ホントですか? 例え話とかじゃなく?」



えみりさんに続き、驚いた顔の牧野さんが久浦部長に訊ねた。

対する部長は大真面目な表情を崩さずうなずいていて、私は絶望的な気分で言葉を失う。

ジンクスのことを、特別久浦部長に口止めしたわけじゃない。

最初は忘れてしまっていただけだけど、その後部長は誰かに話した素振りもなかったから、すっかり安心してしまっていた。

どうして……今、ここで、このふたりに……?



「小糸は自分のことを『男が苦手だ』と話していたが、実際は違う。周りの男性を意に反して傷つけることがないように、自分から距離を置いているらしい」



淡々と話す久浦部長の声を聞きながら、私は自然とうつむいていた。

だって、こわい。牧野さんとえみりさんの、反応が。

このふたりの先輩が……私は、人として好きなのだ。

えみりさんはともかく、牧野さんに対してそういう好意的なものを抱かないようにしていたけれど、今ハッキリと自覚した。
< 129 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop