バッドジンクス×シュガーラバー
なんだかわいわい盛り上がっている一角を、ポカンと見つめてしまう。

そんな私に、浅村さんがイタズラっぽく笑いかけた。



「なんとなくわかった? 久浦部長って、ちょっとありえないくらい強運なのよね」

「強運……」

「私も前、半信半疑で部長に懸賞応募してもらったことあるんだけど……見事当てたわよぉ、高級中華料理店のお食事券」



北京ダックおいしかったわあ、とうっとり両手を胸の前で組む浅村さんから、また久浦部長へと視線を戻す。

視界に映る部長は、未だ社員たちに囲まれ賑やかに会話をしていた。

やっぱり顔はこわいし、どことなくガラも悪いけど……あれだけ部下たちに慕われてるということは、あまりこわがる必要はない人なんだろうか。



「そんなわけで、小糸さんもどうしても手に入れたいものとかあったら、久浦部長の手を借りるといいわよ。偶然にしろ何にしろ、アノヒト、絶対何か引き寄せる力あるから」

「はあ……」



一応、返事はする。

でもまあきっと私に、その機会は訪れない。

だって私は、今までもこれからも、極力男の人と関わらないようにして生きていくから。

久浦部長にも仕事の話でもないかぎり、自分からわざわざ話しかけるつもりはない。

……その“強運”ってやつに……ちょっとだけ、興味はあるけど。
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