バッドジンクス×シュガーラバー
思いきりしかめた顔を隠しもせず言われ、ポカンとしてしまう。

つまり……久浦部長は私の代わりに怒って、あんなふうに連れ出してくれたってこと?

一度思ったら、ダメだった。どうしようもなくうれしくなってしまい、じわじわと頬に熱が集まる。

心臓も、さらに早鐘を打ち始めた。

それを目の前にいる人物に知られたくなくて、私はふいっと顔を背ける。



「っそ、それより部長……西さんの方は、よかったんですか?」



言ってしまってから、まずいと思う。

だけど、時すでに遅しだ。我に返って視線を向けた先の久浦部長は、きょとんと目をまたたかせていた。



「まさか、見てたのか? 全部?」



その言葉に、何も答えず下唇を噛む。

正確には『聞いてた』だけど……私のこの反応は、肯定しているようなものだ。

部長もそれはわかっているらしく、じっと私を見つめながら真顔でひとつうなずいた。



「そうか」



……『そうか』って、何?

自分が抱きつかれながら告白されて、しかも好きな人の話までしているところを第3者に見られていたとわかったら……普通はもっと、焦ったり照れたりするものじゃないの?

……つまり私は、それほど久浦部長にとって“どうでもいい”位置にいる存在なんだ。

とたんに手足の先が冷えていくような感覚がして、また無意識に唇を噛みしめる。
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