バッドジンクス×シュガーラバー
手を握るのとは反対の右手を広げ、小造りなその顔の下半分を親指と人差し指の間に挟み込むようにわし掴む。

あまり力は込めていないとはいえ、驚いた小糸が身を引くより先に顔を寄せて──唇を、奪った。



「……ッ」



とたん、彼女の全身がこわばるのがわかったが、構わず目を閉じる。

ああ、なんだ、なんでもっと早くこうしなかったんだ。

そうしたらきっと、小糸は俺の気持ちの重さを思い知って、もっと警戒してくれていたのに。

自分の我慢がきかなかったことを棚に上げてそんなことを考えながら、右手を頬へとずらした。少し首を傾け、重なった部分をより密着させる。

ぬる、と舌先で相手の唇の表面をなぞれば案の定驚いた彼女が軽く口を開けたので、すかさず舌を差し入れた。

一旦解放した左手で後頭部を押さえ、合わせた唇をいっそう深くしながら口内を荒らす。



「っふ、ひさ……あ、」



きっと俺を止めたくて名前を呼ぼうとしているんだろうが、漏れる声は鼻にかかった甘えたものばかりで、完全に逆効果だ。

自分のこんな仕草が男を煽ると、彼女は知らない。無垢な小糸を今まさに自分が汚しているのだと思うと、ほの暗い優越感を覚える。
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