バッドジンクス×シュガーラバー
「……好きだ、小糸」



息継ぎのために一瞬唇を離したタイミングでとうとうその言葉をささやくと、ピクリと小糸が震えた。

薄くまぶたを開け、未だ至近距離にいる彼女を確かめる。   

小糸は両目に涙を溜めながら、真っ赤な顔でこちらを見つめていた。

……かわいいな。

覚えた感想は、自分でも、甘ったるいと思う。自然と笑みを浮かべ、後頭部に回した手に力を込めてまた小糸を引き寄せた。

ピントが合わなくなる直前、今度は彼女が目を閉じたのが見えたから……再び唇を重ねながら、ますます口角が上がる。

これのどこが“いい上司”だ。我ながら、本能に忠実すぎて呆れてしまう。

相手が自分と同じ気持ちでいてくれているわけでもないのに、俺のこの行動は性急にもほどがあると理解はしていた。

だけど、こんなにも俺の心を乱すのは彼女だけなのだ。小糸には悪いが、諦めてもらうしかない。

騙し討ちのような1度めのキスではわからなかった彼女の唇の味は、砂糖菓子よりも甘かった。
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