バッドジンクス×シュガーラバー
8:美女の告白×恋心と答え
【ごめん、ちょっと仕事長引きそう。予約の時間もあるし、憂依は終わったら先にお店行ってて】
侑子からのメッセージを確認したのは、まさに1日の仕事を片づけ終え、帰り支度をしようとしていたときだった。
今夜はいつかのドタキャンのリベンジで、彼女とディナーの約束をしているのだ。
私は【了解! がんばってね】という文字とともにウサギのゆるキャラが親指を立てているスタンプを送って、ほうと息をつく。
そうしてデスク周りを整理してから、愛用しているバッグを手に席を立った。
同僚たちに声をかけながらオフィスの出入口へと向かう私は、避けて通れない“とある人物”のデスクに近づくにつれ、鼓動を速くする。
「……お先に失礼します」
かなり気合いを入れて、一応は通り過ぎる間際に立ち止まった。
私が発した小さな声に反応し、傍らに立つ部下と何やら議論を交わしていたデスクの主──久浦部長が、顔を上げる。
「ああ。お疲れさま」
部長は椅子に座ったままなので、通常と違い自然とこちらを見上げる形だ。
いつもなら自分より遥かに高い位置にある整った顔から、まっすぐ向けられる眼差し。ますます心臓は早鐘を打って、私を苦しくさせる。