バッドジンクス×シュガーラバー
『涙目で、見える肌が全部赤い。いかにも“イケないことしてました”って、顔に書いてある』
『……ッ!?』
バッと勢いよく自分の両頬に手のひらをあてた。
その動きと同時に久浦部長の手は離れて、私たちの間に少しだけ距離ができる。
『いっ、イケないことって……っ』
『少なくとも、さっきのキスは職場でするようなやつじゃないよな』
楽しげな笑みのまま、部長がこともなげに言った。
私はもう、言葉にならない。羞恥心からわなわなと身体を震わせて、ただひたすら目の前にいる男性を見つめた。
ふとそこで意地悪な笑みを引っ込めた久浦部長が、真顔で口を開く。
『小糸は……俺のことが、嫌いか?』
……「好きか」、じゃなくて……そんな訊ね方をするのは、ズルいと思う。
無言のまま首を横に振った私を見て、久浦部長はホッとしたように頬を緩めた。
『ここまで手を出しておいて今さらだろうが……小糸の中にはまだ、俺が望むような感情があるわけじゃないのはわかってる。……でも』
そこでこちらに右手を伸ばした部長が、サラ、と私の髪をすくうように撫でる。
『もし、俺を受け入れる気になって、それを直接伝えてくれたら──そのときはもう、手加減しない。嫌ってほど甘やかしてグズグズに蕩かしてやるから、それ相応の覚悟は済ませておけよ』
言いながら悠然と微笑んだ久浦部長に、たぶん正しく発言の意味を理解した私はまた身体を熱くさせて。
とんでもない宣戦布告に対し何の言葉を返す余裕もなく、そのまま逃げるように車を降りたのだった。
『……ッ!?』
バッと勢いよく自分の両頬に手のひらをあてた。
その動きと同時に久浦部長の手は離れて、私たちの間に少しだけ距離ができる。
『いっ、イケないことって……っ』
『少なくとも、さっきのキスは職場でするようなやつじゃないよな』
楽しげな笑みのまま、部長がこともなげに言った。
私はもう、言葉にならない。羞恥心からわなわなと身体を震わせて、ただひたすら目の前にいる男性を見つめた。
ふとそこで意地悪な笑みを引っ込めた久浦部長が、真顔で口を開く。
『小糸は……俺のことが、嫌いか?』
……「好きか」、じゃなくて……そんな訊ね方をするのは、ズルいと思う。
無言のまま首を横に振った私を見て、久浦部長はホッとしたように頬を緩めた。
『ここまで手を出しておいて今さらだろうが……小糸の中にはまだ、俺が望むような感情があるわけじゃないのはわかってる。……でも』
そこでこちらに右手を伸ばした部長が、サラ、と私の髪をすくうように撫でる。
『もし、俺を受け入れる気になって、それを直接伝えてくれたら──そのときはもう、手加減しない。嫌ってほど甘やかしてグズグズに蕩かしてやるから、それ相応の覚悟は済ませておけよ』
言いながら悠然と微笑んだ久浦部長に、たぶん正しく発言の意味を理解した私はまた身体を熱くさせて。
とんでもない宣戦布告に対し何の言葉を返す余裕もなく、そのまま逃げるように車を降りたのだった。