バッドジンクス×シュガーラバー
「侑子が久浦部長のことを好きだって聞いて、一度は諦めかけたけど……結局私、自分の気持ちに嘘がつけなかった。久浦部長に、伝えたよ」

「え?」



侑子が目を丸くする。

私は、イタズラっぽく笑いながら続けた。



「ごめんね。私、侑子が思ってくれるほど優しくもなくて、案外図太い性格だったみたい。だからこれで、おあいこにしよ?」



束の間、彼女は驚いた表情でまじまじ私を見つめていた。

けれどもふっと、その綺麗な顔をほころばせる。



「……そっか。私、憂依のそういう意外とガッツあるところ、好きだわ」

「ありがと。私も、侑子のことは全部好きだよ」

「うれしいこと言ってくれちゃって」



私の恥ずかしいセリフに侑子は本当にうれしそうに笑い、1歩こちらから離れた。



「引き留めてごめんね。久浦部長のところに、行くんでしょう?」

「……うん」



若干照れながらうなずいた私を見て、侑子が笑顔のまま続ける。



「久浦部長によろしくね。あと、『吉永侑子はあなたのことが嫌いです』って伝えておいて」

「それは……困ったな……」



まっすぐな目でわりと本気っぽく言うから、狼狽えてしまう。

侑子は「冗談冗談」とあながちそうでもなさそうな声音で付け足し、また笑みを浮かべる。



「それじゃあ、またね。気をつけて行ってらっしゃい」

「うん、ありがとう。侑子も、帰りは気をつけてね」

「ありがと」



大切な友人と笑顔で別れ、また歩き出す。

自然とペースが早くなる足取りは、驚くほど軽かった。
< 222 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop