バッドジンクス×シュガーラバー
「あの、部長無理はせず……っお気遣いは結構ですので!」

「無理じゃない。コーヒーでいいな?」

「う、は、はい、いただきます……」



カチコチに緊張している私に苦笑し、久浦部長は手土産に渡したケーキの箱を持ってキッチンへと向かう。

コーヒーを淹れてくれている広い背中を眺めながら、この隙になんとか心を落ちつかせようとひそかに深呼吸を繰り返した。

間もなく、部長が両手にマグカップを持って戻ってくる。



「熱いから気をつけろよ。ケーキも今食べるか?」

「あ……え、えっと……」



正直、今は胸の中も頭もいっぱいいっぱいで、おいしくケーキを食べられるような心境ではない。

そんな私の状態をなんとなく察しているのか、久浦部長はまた笑って「あとにしよう」と言った。

マグカップを目の前にあるローテーブルに置き、部長が隣に腰を下ろす。

ふたり分の重さでソファが沈み込む感触にすらドキドキして、そちらを向くことができない。



「まずは、仕事の話だ。役員プレゼン、どうだった?」



その問いかけにハッとして、私は隣の人物へと顔を向けた。

至近距離でこちらを見下ろす久浦部長は、どことなくソワソワした様子で続ける。
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