バッドジンクス×シュガーラバー
「俺のことを、好きだと言ったあのときの言葉は──本当に、嘘じゃないんだな?」



髪を撫でるのとは反対の手でひざの上の両手を包まれ、まっすぐに問いかけられる。

すでに、羞恥心はピークに達していた。だけど、もう逃げたくない。全部伝えたい。

恥ずかしさに耐えて視線を合わせながら、コクリとうなずいた。



「嘘じゃ、ないです。私は……久浦部長のことが、好きなんです」



瞬間、彼がパッとわかりやすくうれしそうな顔を見せた。

その衒いない笑顔に、鼓動が大きく高鳴る。そうして固まっている私へ、さらに部長が距離を縮めてきた。




「よかった。ありがとう、小糸」

「い、いえ、その、こちらこそ……?」



すぐそばに大好きな人の顔があることで動揺しまくりの私は、つい自分でもよくわからない返事をしてしまう。

けれど久浦部長は、気にする様子もない。あまつそのまま抱きしめてくるものだから、こちらの心臓はもう破裂寸前だ。



「ひさ、久浦部長……っ」



思わず上げた戸惑いの声は完全にスルーで、彼はきつく抱擁しながら私の髪に顔を埋めている。



「うれしい。本当に……ああ、いい匂いだな、小糸」

「ひえ……っ」



うっとりとつぶやかれたセリフに間抜けな声が漏れ、一気に体温も上がった。

だけど、部長こそなんだかいい匂いがする。たぶん柔軟剤と、部長自身の匂いが混ざった香り。

落ちつくようで、けれども私の鼓動を速くする……唯一無二の、香りだ。
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