バッドジンクス×シュガーラバー
「っん」



意図せずとも、甘い、鼻にかかった声が漏れた。

自分のそんな声が恥ずかしくて、堪えきれずギュッと目を瞑る。それを合図にするように、部長の舌先がゆっくりと私の下唇をなぞった。

迷ったのは一瞬だ。おそるおそる唇を結ぶ力を緩めれば、すかさず入り込んできた熱い舌にあっという間に自分のそれを絡め取られる。



「ふあ、あ、ひさ、ん……っ」



恥ずかしい水音をたてながら口内を嬲られ、ゾクゾクと身体を震わせながらなんとか彼の胸にしがみついた。

頭がぼーっとする。息が上手くできない。

逃げ腰になるのを許さない大きな手が、私のウエストに回って引き寄せた。また、キスが深くなる。

しばらくそうしてようやく顔が離れたとき、私はすっかり身体の力が抜けてしまっていた。



「……いい顔。かわいいな」



私の口もとを濡らすどちらのものともつかない唾液を親指で拭い、久浦部長が情欲のともった眼差しで笑う。

……嘘だ。かわいいはずがない。

今の自分は、絶対──キスに酔いしれて蕩けきった、だらしのない顔をしているはずなのに。
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