バッドジンクス×シュガーラバー
番外編:スリーピング・タクティクス


──思えば、今日の彼女は早い段階でなんだか様子がおかしかった。

まず、その1。交際を始めた約2ヶ月前、俺たちの関係について同じスイーツチームの牧野と浅村以外には秘密にしておきたいと言ったのは、彼女自身だ。

にもかかわらず、仕事中なんだかことあるごとに憂依からただの上司に向けるものではない熱っぽい視線を感じ、つい誰もいないミーティングルームに連れ込んでアレコレしたくなる衝動を何度も堪える羽目になったり。

その2。週末は俺の家で過ごすことがデフォルトになっているため、金曜日である本日も例に漏れず仕事終わりに外で待ち合わせて食事をし、一緒に自宅マンションへと向かう約束だったのだが……「今夜はお家で一緒にお酒を飲みませんか?」と下戸の彼女には珍しく宅飲みの誘いをしてきたり。

極めつけのその3。いざ食事を終え自宅マンションに着き、お互いにシャワーも済ませてすっかりくつろぎモードになってから途中寄ったコンビニで調達したアルコールとつまみで酒盛りを始めれば、自分の限界値をちゃんと把握しているはずの彼女が明らかに許容範囲以上とわかるペースで、あっという間にピーチサワーの缶を空っぽにしたり。

心配になった俺は「今日はもう寝ろ!」と無理やり洗面所に追いやって歯磨きをさせ、案の定覚束ない足取りの彼女の手を引きながら寝室に連れていって──と、ここまでが、つい先ほどまでのハイライトである。
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