バッドジンクス×シュガーラバー
定時の18時を30分ほど回った頃。

デイリーフーズ部のオフィスをあとにした私は、エレベーターの手前で予想外の人物に遭遇してしまい硬直した。



「……ああ、小糸。今帰りか?」



その人物とは、ベーカリーグループの社内プレゼンに出席するためにしばらく席を外していた久浦部長だ。

外出から戻って以降、あまり顔を合わせずに済んで安心していたのに……まさか、最後の最後で会ってしまうとは。

不可抗力とはいえ、昼間は長時間一緒に過ごしている。

少なくとも今日は、これ以上関わるべきじゃないと思ってたんだけどなあ……。



「はい……お先に、失礼します」



とはいえ、上司から話しかけられて無視することもできない。

ボソボソと言葉を返しつつ、その横を通り抜けようとした。

けれども私の思惑は、突然右の二の腕を掴まれたことによって阻止されてしまう。



「待て小糸。ちょうどいい、少し話がある」

「えっ!? や、あの、は、話って」



反射的に足を止めながら、動揺で声が裏返りそうになった。

久浦部長はしっかり私の腕を拘束したまま、こちらを見下ろす目をすっと細める。



「3分で済む。……おまえが、素直に吐きさえすればだが」
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